唐澤富太郎 人と業績


 
 
唐澤富太郎

からさわ とみろたう
1911年(明治44年)-2004年(平成16年)
東京教育大学名誉教授。文学博士。日本教育史研究者。
日本及び世界の教科書研究に尽くす。学び、遊び、暮らしから見た「実物による生活教育史」を目指し、1993年(平成5年)自宅に博物館を設立。
 
明治44年 新潟県出雲崎に生まれる。東京高等師範学校、東京文理科大学教育学部卒業、更に研究科(大学院)で5年間ドイツ哲学と仏教哲学を研鑽した。
昭和17年 奈良女子高等師範学校教授。
昭和28年 学位論文『中世初期仏教教育思想の研究』で学位を得る。
昭和35年 東京教育大学教授。
昭和37年 ユネスコ国際教科書会議で講演、5ヵ月半にわたり16ヵ国の教育実態を調査。
昭和50年 日本女子大学教授、東京教育大学名誉教授。
平成5年  唐澤博物館設立。

唐澤富太郎コレクション

日本の教育史研究は、政策や制度といった文献中心主義の時代が長く続きました。こうした潮流に対し唐澤富太郎は子どもの生きた姿や教育の実際の姿を浮き彫りにしようと、実際に子どもが学び、遊んだ実物を収集して、それを基にしたまったく独自の日本教育史のフィールドを構築しました。その集成が現在の唐澤富太郎コレクションとなっています。
埼玉県川越市の明文堂で教科書用版木を収集しているところ(昭和43年頃)。これらの版木は衝立に姿をかえて博物館に展示されている。 個人で収集することは、楽しくもあると同時に大変な苦労を強いられる作業でもありました。全国各地を巡り、重く、大きく、ほこりにまみれた資料を宝物の如く大事に両手に抱え、自宅に持ち帰る日々が続きました。時にはトラックや貨車を借り切って運んだことさえありました。こうして集めた教育資料は数万点にも及びます。
当時の日本は高度成長期。古いものは惜しげもなく捨てられる時代でした。すでにこれまでも地震、戦争によって多くの文化財を焼失しています。唐澤コレクションは、危うく破棄されるところだった墨塗り教科書や学校教具、時代を映すノートや筆箱、通知簿、賞状、児童作品、人形、玩具など多くを保存することとなりました。これらの資料をもとに唐澤富太郎は『図説 明治百年の児童史』や『教育博物館』など多くの著作を出版し、「モノによる日本人の人間形成史」の研究を試みました。

 
 

埼玉県川越市の明文堂で教科書用版木を収集して
いるところ(昭和43年頃)。これらの版木は衝立
に姿をかえて博物館に展示されている。

著作一覧

単著
『親鸞の人間観・教育観』第一書房 1942
『親鸞・道元・日蓮』文教書院 1943
『愛の哲学』奈良共同印刷出版部 1946
『親鸞の世界』弘文堂書房・法蔵館 1947・1961(増補版)
『ナトルプの社会教育学』黎明書房 1949
『人間性・運命・宗教』黎明書房 1949
『日本教育史』誠文堂新光社 1953
『中世初期仏教教育思想の研究』東洋館出版社 1954
『学生の歴史 』創文社 1955
『教師の歴史 』創文社 1955
『教科書の歴史』創文社 1956
『日本人の履歴書』読売新聞社 1957
『新しい道徳教育の創造』東洋館出版社 1958
『のびていく 1年生~6年生』好学社 1958
『日本の女子学生』講談社ミリオン・ブックス 1958
『目で見る世界の教科書』好学社 1958
『教育の叡智』東洋館出版社 1959
『世界の道徳教育』中央公論社 1961
『教科書と国際理解』中央公論社1962
『世界の理想的人間像』中央公論社1963
『あすの日本人』日経新書 1964
『世界教育風土記』講談社 1964
『日本から見た世界の教育』東洋館出版社 1964
『理想の人間像』中公新書 1964
『おかあさんの知恵』国土社・新書 1965
『親鸞』牧書店 1965
『日本人の叡知』実業之日本社 1966
『宗教は生きている』百華苑 1967

 
 

『図説近代百年の教育』国土社 1967 のち日本図書センターより復刊
『図説明治百年の児童史』講談社 1968 のち日本図書センターより復刊
『近代日本教育史』誠文堂新光社 1968
『日本教育史』誠文堂新光社 1968
『明治百年の教育』日本経済新聞社・新書 1968
『執念』講談社 1970
『現代教育の課題』勁草書房 1971
『宗教のなかの人生』法蔵館 1971
『親鸞の世界』法蔵館 1971
『創造的人生のすすめ』PHP研究所 1972
『教育の心を求めて』第三文明社 1973
『教育の流れの中で』帝国地方行政学会 1973
『仏教的人間像の探究』東洋館出版社 1973
『貢進生』ぎょうせい 1974
『教育的真実の探究』ぎょうせい 1975
『教育博物館』ぎょうせい 1977
『これからの教育と人間像』木耳社 1978
『道徳教育原論』協同出版 1978
『女子学生の歴史』木耳社 1979
『児童教育史』創価大学 1985
『唐沢富太郎著作集』全10巻 ぎょうせい 1989-1992
『日本人の死生観』玉川大学出版部 1991
『無位の真人良寛』教育出版センター 1991
『学校週五日制時代の女性教師』東京法令出版 1997

共著・編著・復刻
『小学読本 小学入門 読書入門』毎日エディショナルセンター 1972
『日本人と教育』平井信義、祖父江孝男共著 帝国地方行政学会 1974
『教育学研究全集 2 日本の近代化と教育』編著 第一法規出版 1976
『錦絵寿語録』毎日エディショナルセンター 1976
『明治教育古典叢書』国書刊行会 1980-1981
『明治初期教育稀覯書集成』 編集 雄松堂書店 1980-1982
『図説教育人物事典』編著 ぎょうせい 1984
『児童教育史資料集成』ナダ書房 1985